公開: 2024年4月17日
更新: 2024年4月18日
学習の能力を測定するためには、状況の種類、刺激の種類、と正しい反応の種類の3つの組み合わせと、刺激が与えられてから反応を起こすまでの時間の速さを観察することが必要です。状況の種類の多さ(数)と、刺激の種類の多さ(数)との組み合わせの多様さに対して、反応の種類の多さ(数)によって、問題(学習の内容)の複雑さが決まります。
一定の複雑さの問題を、どれだけの時間で解決できるかによって、学習の善し悪しが決まります。つまり、学習の良し悪しは、状況についての記憶、刺激の種類に関する記憶の鮮明さと正確さによって決まります。つまり、過去の出来事について、できるだけ詳細な事実に関する記憶を、時系列にそって細かく保持することが、正確な応答を生み出します。このことから、生物の学習には、記憶能力が密接に関係しています。
象の群れを率いるメスの象は、自分が生まれてからの出来事と、その場所に関する記憶をずっと保持しているらしいことが分かっています。そうでなければ、どのような干ばつの時、どこへ移動するのが、その群れを維持するのに有利かが、分かりません。似たような状況でも、何か違った事実があったとすれば、どこへ、またはどのような場所へ移動すべきかが、変わります。かつて干ばつの時、北西へ向かって進み、北の湿地帯へたどり着けたとすれば、そちらへ向かうのが普通でしょう。
しかし、過去の北西への移動では、他の肉食獣も同じ方向へ移動していたため、群れの何頭かが、肉食獣に襲われ、死んでいるとすれば、今回の干ばつで、北西に向かって移動するのが妥当かどうかは分かりません。有能な群れのリーダーである年老いたメス象は、そのようなことも記憶していて、群れを、より妥当と考えられる方向へ移動させます。つまり、寿命が長く、経験豊かで、記憶能力の高いリーダーに率いられた群れほど、大きな群れに成長します。